かさね紅

東大寺では修二会の行が始まります。二月堂の十一面観音の周りには、今年も椿の造り花が捧げられます。花となる紅、白、黄の和紙は、毎年、染織史家・吉岡幸雄先生の工房が、祈りを込めて染めています。花弁の赤は紅花、花の芯になる黄はくちなし。連行衆が一輪一輪つくる花は、東大寺の裏の春日山から切り出された椿の生木に、あたかも咲いているように挿されます。1270年の間、一年たりとも休まず続けられている修二会。鮮やかな赤を引き出す伝統の手法も、途切れることはないでしょう。椿、梅、そして桜。花を思い、春を思います。