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エッセイ:プレイリー・スチュアート・ウルフ

長くゆっくりとした火 長くゆっくりとした火

長くゆっくりとした火

赤く燃える備長炭が、掘り下げた囲炉裏に積まれる。京都の冬の中でもいまちばん寒い日、囲炉裏の間が静かに温まる。長く美味な夕べが終わる頃には、欄間の障子を少し開けて入ってくる冷たい空気が心地いいくらいだ。風が白くなった灰の切片を巻き上げ、それが天井からの光で柔らかな雪の片のように輝く。

京都の料理人は、宮崎の山から集める野生のアラカシの備長炭を好む。そのほとんどが、秋盛地区で作られている。たくさんの窯が集まる小さな地域の、炭焼き職人の平均年齢は70歳ほど。窯の火を世話している梅田兼重の仕事ぶりには、年齢を見紛うような活気がある。この山では誰もが働き者だと 言いながら、カシの古木を切り、背中にしょって引き出してくる様子を説明してくれる。木は窯の中に縦に積まれ、入口を閉じて20日間焼かれる。その長い工程の間、彼は煙の色や匂いから、木が乾燥し、炭化していく進行状況を判断する。

職人が引退すると窯は止まる。移住してその技を学ぼうとする若い家族が少しずつ増えている。濱田一家は都会の暮らしに疲れ、子供を田舎で育てたくて東京から越してきた。仕事は体力的にきついが、濱田裕子は手を使って働くことが気に入っている。勤めていた会社では自分が歯車の一つになったように感じていたので、物づくりに初めから終わりまで関わることに価値を感じている。まだ体力づくりの最中だ。ここでは誰もが健康で驚くという。 60歳、70歳の人と比べて、まだ自分の方が弱く感じる。

夜明けの空気は冷たい。窯の扉が開かれ、流れ込んだ酸素が窯の室内の温度を上げる。中の空気は白熱しており、木の幹の影だけが見える。山田弘司は鎖で支えられた長い鉄釘を動かし、熱で輝く棒を手前に一かたまりずつ引き寄せる。金属製の熊手でそれを掻き出し、砂と灰をかける。ここに妻と子供と越してきたときには誰一人知人はいなかったが、山と共に生きる暮らし に生きがいを見出し、炭焼き職人の見習いになった。いま彼は、カシが何十 年にもわたって持続可能な方法で採集されてきた山の斜面を注意深く歩き回る。そして適当な太さの枝だけを切り、細いものは残していく。枝を切ることで新たな成長が促され、また10年後くらいに収穫できる枝が育つ。楽な暮らしではないが、充実している。

灰から取り出された黒曜石のような備長炭は、白っぽい粉を纏っていることから白炭とも呼ばれている。炭はきれいに掃除され、長さや太さごとに揃えられて、京都に送られる。炭は高台寺和久傳で梱包を解かれ、料理人は滑らかな切り口が黒いダイヤモンドのように輝くその純粋な炭の束を手にする。寒い冬の夜、炭は客人が集まる囲炉裏に積まれ、そこで間人蟹の甘みのある肉が焼かれて供される。

筆者紹介

プレイリー・スチュアート・ウルフ

料理が大好きな、文筆家、写真家。2007年に来日し、すぐに日本の食文化の深さと美しさに気づく。日本の食の素材、考え方、そして実践を生活の中で見つめるブログ「Cultivated Days(日々を耕す)」を記し続けている。

https://cultivateddays.co